私の知人のお話。ここでは、Aさんとしておきます。
Aさんは、Web関連のコンサル会社を起ち上げて間もない若手経営者です。
彼は非常にお洒落で、いってみれば今風。そのためか、チャラチャラした人間、という印象を持つ人もいるようです。しかし、根は非常に生真面目で几帳面な人間なのです。
そんな彼と、久しぶりに食事に出かけた夜のこと。
■ 2つの財布
私の方が年上ということもあり、ご馳走する予定だったのが、どうしても今晩は自分が払う、とのこと。 結局、割り勘で落ち着きました。
お店への支払は私が済ませていたので、後は、彼から半分もらって一件落着。
・・・のはずが、
彼は、上着のポケットから財布を取り出すも、どうやら足りない様子。
私としては、最初からご馳走する予定だったので、「今日は、イイよ。」と、言おうとすると、
何と、彼のセカンドバッグから、財布がもう1つ出てきました。
店を出て、
私 「どうして財布を2つ持ってるの?」
彼 「あ、これですか。こっちは、会社の財布なんですよ。」
と、ちょっと照れくさそう。
自分と会社のお金をハッキリ分けるために、財布を別にしているそうです。
彼の生真面目さ、几帳面さゆえ、でしょう。
しかし、Aさんには申し訳ないのですが、私は少々呆れてしまいました。
■ 財布を分けることに意味があるか?
Aさんは、2つの財布を使いこなしているようです。
先日の食事の時のように、個人の持ち金で足りず、一時的に会社の財布から借用した場合、その記録をメモしているようです。
Aさんに聞いてみました。
私 「メモし忘れることもあるんじゃない?」
彼 「う〜ん、ありますね。細かい金額になると忘れることも多いかな。領収書がない場合は、もう、お手上げですね。」
私 「で、結局、訳が分からなくなったりとか?」
彼 「それは、当たってるかも・・・」
私 「第一、面倒くさくない?」
彼 「確かに面倒ですよ。でも、お金のことだから、出来るだけキッチリしておきたいんですよ。」
ご立派! この生真面目さには脱帽します。(私も見習わねば!)
しかし、彼の方法は絶対に上手く機能しません。保証します。
■ そもそも分けようと思った理由は
私は、小規模な会社(たとえば、社長の1人会社など)の場合、個人の現金と会社のそれを区別する必要はないと思っています。
Aさんの言葉を思い出して下さい。
「お金のことだから、出来るだけキッチリしておきたい」
という部分。
彼は、出来るだけ何をキッチリしたかったのか?
それは、会社の現金を「いつ」「何に」「いくら」使ったのか、そして、現在、「いくら残っているのか?」のはずです。
(彼が、それをハッキリ自覚していたか否かはわかりませんが。)
Aさんのように、財布を別にしている人は、他にもいらっしゃるでしょう。
でも、何度も言いますが、絶対に上手くいきません。
事実、長続きしない例が多いのではないでしょうか?
理由は、私とAさんの会話にもありますが、次の3つです。
1.まずもって、非常に面倒くさい。(少なくとも、私には無理です。)
2.お金(現金)には、所有者の名前が書かれていない。
3.領収書や支払メモがなければ、使ったこと自体を忘れる可能性が高い。
結果的に、訳が分からなくなり、もろくも頓挫します。
■ では、どうすべきか?
いきなり結論です。
会社は現金を持たない ことにすれば問題は簡単に解決します。
会社のお金は、会社名義の銀行口座のお金のみ。
社長さんは、毎月初、会社の銀行口座から一定の金額を引き出して、ご自分のお財布に入れておきましょう。個人の財布に入った時点で、このお金は社長さんのお金です。財布を分ける必要はありません。
ただし、会社の帳簿(出納簿)には、「何月何日に社長に仮払金***円」という記録を残しておきます。
■ 普段は
お金の出所は、全て社長さんの財布です。
毎日、社長さんの財布からは、諸々の支払がなされていくはずです。
交通費、飲食代、本や事務用品、OA用品などを購入したりと。
これらの支払には、個人的な出費と会社の経費が混在しているはずです。
でも、気にする必要はありません。
ただし、会社の経費であれば、出来るだけ領収書をもらうようにしましょう。
無理なものは、小さなメモに支払内容を走り書きしておきましょう。
必要な情報は、「支払日」「支払先」「内容」と「金額」です。
たとえ領収書があっても、不足している情報があれば、領収書の余白にでも
メモっておきます。
■ そして、月末
社長さんの手元には、領収書や支払メモが残っているはずです。
これらは、会社の経費として支払われた現金を意味します。
日付順に、コピー用紙にでも貼り付けていって下さい。
それを見ながら、「仮払金の精算書」を作成します。
(手書きでもパソコンでもかまいません。)
必要事項は、「支払日」「支払先」「内容」と「金額」、これだけ。
精算書の合計額が、社長さんの財布から支払われた、会社の経費合計です。
なお、領収書等を貼り付けたコピー用紙は、精算書に添付しておきます。
そして、精算書を基にして、帳簿作成ソフトに順次入力していきます。
精算書を作るのが面倒な場合には、領収書等から直接、帳簿作成ソフトに入力してもかまいません。この場合、領収書の類は別途ファイルして下さい。
■ 足りなかったり、余っていたら?
会社から仮払いで受け取った金額と、精算書の合計額を比較してみましょう。
両方同額なんてことは、まずありません。
使った金額の方が多かった、つまり、足りなかった、もしくは、受け取った金額が余っている場合が通常でしょう。
この場合、差額をどうすべきか?
毎月末、不足分は会社から受け取り、余った分は返す、が基本でしょう。
でも、これも面倒ですね。
足りなかった、または余った金額が大きくならなければ、決算まで放っておいてもかまいません。決算の時には、精算するようにしましょう。
■ Aさんのご意見
このことを、後日、Aさんに話しました。
この方法なら、手間と、ある意味でのストレスは、従来の半分以下になるはずです。
ところが、
「やっぱり、何かスッキリしないから、今まで通り続けます。」
とのこと。
私の力不足か、彼の頑固さか?
こちらも、スッキリしない(?)気分です。