法人成りすれば、なぜ節税できるのか?

法人化すれば、なぜ節税できるのか?
お問い合わせの中で、最も多いご質問です。

詳細は、専門カテゴリー「法人成りで節税」のページをご参照いただくとして、ここでは、エッセンスと考え方を述べます。

節税できる理由は、2つあります。
1つ目は、給与所得控除の利用です。
そして、2つ目として、個人と法人の税率構造の違いです。


1−1.給与所得控除とは?

まずは、給与所得控除とは、何でしょう。

これは、会社員などの、給与所得者にのみ認められる特別な控除です。
個人事業者は、この控除を利用することができません。
なぜなら、個人事業者の所得は事業所得であり、給与所得ではありません。
個人事業主の場合、自己への給与という概念はなく、儲け(自己の取り分)は、事業所得ということになります。

それが、個人事業を法人化することによって、事業所得から給与所得へと、事業主の所得区分が変わるのです。

個人事業者の所得の計算方法を思い浮かべて下さい。
年間の売上から、仕入代、従業員の給与や諸経費を差し引いた残りが、事業所得です。
これは言ってみれば、個人事業主の取り分(儲け)です。

この事業所得から各種の所得控除を差し引いた残りが課税所得(=課税の対象)になります。
所得控除とは、社会保険料控除や生命保険料控除、扶養控除、基礎控除などです。

一方、会社員などの給与所得者の場合は、どうでしょう。
彼らの儲けは、会社から受け取る給与です。
これが、個人事業者の儲け(=事業所得)に該当します。

各種の所得控除は、会社員も個人事業者も全く同じです。違いはありません。

では、会社から受け取った給与から所得控除を差し引いた残りが給与所得か?
違うのです。

会社員などの場合、さらに、給与所得控除という特別な控除が差し引かれます。
その、差し引いた残りが、課税対象になります。

個人事業者の課税所得は 
= 事業所得 − 所得控除

会社員などの課税所得は
= 給与総額 − 所得控除 − 給与所得控除


1−2.個人事業主が社長になれば

個人事業を法人化すれば、事業主は社長になります。
社長といえども会社から給与をもらう身、立派な給与所得者です。
給与所得者であれば、大手を振って、給与所得控除を利用できます。

少し粗っぽい仮定の話をします。
個人事業の事業所得と、法人化した後の給与総額が等しいと仮定します。
先の算式を思い出してください。

個人事業主の課税所得は 
= 事業所得 − 所得控除

法人化して社長になった場合の課税所得は
= 給与総額 − 所得控除 − 給与所得控除


この算式で、事業所得 = 給与総額 だったとしましょう。
(給与所得ではありませんよ、給与総額です。)
法人化して、事業所得、すなわち事業の儲け、を全て社長に給与で支払ったと仮定しましょう。

社長(事業主)個人にとっては、給与所得控除の分だけ課税対象が小さくなります。
一方、会社から見れば、儲けを全て給与で支給するため、会社に利益は残りません。
課税所得はゼロ円です。


この給与所得控除の利用が、法人化で節税できる最も大きな理由です。

平成23年4月5日現在、民主党が今国会に提出中の税制改正案には、給与所得控除の利用を一部制限する法案が含まれています。民主党の国会運営と、先の東日本大震災との影響により、税制改正法案の行方は全く分かりません。
当サイトでも、税制改正の行方について、注意深く見極めてまいります。


2−1.個人と法人の税率構造の違い

法人化による節税策の2つ目が、個人と法人の税率構造の違いを利用する方策です。
ただし、これを利用できるのは、所得レベルが高い場合に限られます。

個人の所得税の税率は、累進税率と呼ばれる構造をもっています。
すなわち、課税所得が増加するにつれて、高い税率が適用されます。

一方、法人が納める法人税の税率は、固定税率です。
課税所得の増減に関係なく、一定の固定税率が適用になります。
ただし、一定の中小法人については、年800万円までの課税所得については、軽減税率が適用される特例があります。

ここでは、個人は累進税率、法人は固定税率と覚えてください。


2−2.税率構造の差を、どう利用するのか

1.の給与所得控除の説明の際、会社の儲けを全て社長の給与で支払う、と述べました。
すなわち、儲けを全て給与で支払って、会社に利益を残さない、と。
それにより、給与所得控除を最大限に利用できる、と。

ただ、法人化した後、会社の利益が増えるに応じて、ずっと社長の給与を増やし続けることは、実は得策ではないのです。

個人は累進税率、法人は固定税率とのべました。

最初は、個人の税率が、法人の税率を下回ります。
しかし、個人の課税所得が増加するにつれて、個人に適用される税率も高くなってゆきます。
そして、いずれ、税率が逆転します。

社長の給与を増やしていけば、いずれ、会社に利益を残した方が有利になる所得レベルに到達します。
個人の税率が、法人の税率を上回る所得レベルに到達するわけです。
そうなれば、もう社長の給与は増やさずに、会社に利益を残して、会社で納税する方が有利です。

ただ、その所得レベルは、個々人によって異なります。
各種の所得控除の金額が、個々人で異なるからです。

ここでは、いつまでも給与所得控除に頼った節税を考えるのではなく、一定の所得レベルで、昇級を止める方が有利であることを、覚えておいてください。