なぜ個人事業を法人成り(法人化)すれば節税が可能になるのか?

個人事業を法人成り(法人化)した結果、根本的に変わる点があります。
それは、事業主も 給料をもらう立場 になることです。


個人事業の場合は

個人事業主は従業員に給料を支払いこそすれ、ご自身に給料はありません。
売上から仕入代、人件費、家賃、その他の諸経費を差し引いた残り、つまり個人事業の『儲け』が事業主の取り分です。この個人事業の『儲け』を、所得税法では 事業所得 として課税の対象にします。

個人事業の儲け = 事業主の取り分 = 事業所得 → 所得税の課税対象

の関係にあります。


個人事業を法人成り(法人化)した場合は

個人事業主は社長になります。社長も会社から給料をもらう立場です。
社長の給料は会社では経費として処理されます。

少々荒っぽい例になりますが、『儲け』を全て社長の給料にする、と仮定しましょう。
社長の給料は全て会社の経費になりますから、会社の利益はゼロ。会社は法人税を支払う必要はありません。

他方、社長は、受け取った給料に対して所得税が課せられます。
しかし、給料の全額が課税の対象になるわけではありません。給料の額から給与所得控除というものを控除した残りが『給与所得』として課税の対象になります。

すなわち、

給料の額 − 給与所得控除額 = 給与所得 → 所得税の課税対象

となるわけです。


これが法人成りで節税できる理由

個人事業を法人成り(法人化)して会社から給料をもらう最大のメリット、それが、給与所得控除です。

先述の関係を見直してみましょう。

個人事業の場合

個人事業の儲け = 事業主の取り分 = 事業所得 → 所得税の課税対象

13135046_02


個人事業を法人成り(法人化)した場合

『儲け』を全て社長の給料にする、と仮定すれば、

事業の儲け = 事業主の取り分 = 社長の給料
社長の給料 − 給与所得控除額 = 給与所得 → 所得税の課税対象


13135046_01


事業所得に比べて、給与所得控除の分だけ課税対象が小さくなっていることが、お解りいただけると思います。

(注)青色申告特別控除の適用を受けている個人事業主には、事業所得から65万円を特別に控除することが認められています。しかし、給与所得控除と比較した場合の節税メリットは非常に小さなものです。

つまり、社長の給料は、

・会社では、その全額を経費処理するとができる
・給与の額から給与所得控除相当額を差し引ける
ということになり、事業所得に比較して課税対象を小さくできるのです。

給与所得控除を最大限に活用する / 法人成りで節税

給与所得控除を最大限に活用するには、『儲け』を出来る限り社長の給料にすることです。給与所得控除の額は、給与の額に比例しますので、給料を増やせばそれだけ控除できる金額も増えることになります。

このカテゴリーでは、個人事業の法人成り(法人化)による節税の概略をご理解いただくことが目的です。したがって、給与所得控除の詳細や計算方法などは、別のカテゴリー「給与所得控除」にて詳述することにします。

ここでのポイントは、
給料を増やす → 給与所得控除が増える → 節税効果が上がる
という図式です。このカテゴリーでは、この点だけを押さえておいて下さい。



さて、これまで述べてきたことと少し矛盾することを、次に述べます。
それは、
給与所得控除だけ考えていては、更なる節税チャンスを逃す
という点です。



★ご注意!★
従来、代表者等の出資比率が90%以上の場合、代表者の役員報酬の一部を経費とみなさない、という規制がありました。しかし、この規制は、平成22年度の税制改正において廃止されることが決定されました。廃止時期は、平成22年4月1日以降に終了する事業年度からです。
したがって、従来のように会社設立時に出資比率を気にする必要は無くなりました。

当サイトでは、皆様の注意を促す意味もあり、一定期間、規制が廃止された旨を注意書きする方針です。



★ご注意!★
平成23年4月5日現在、民主党が今国会に提出中の税制改正案には、給与所得控除の利用を一部制限する法案が含まれています。民主党の国会運営と、先の東日本大震災との影響により、税制改正法案の行方は全く分かりません。
当サイトでも、税制改正の行方について、注意深く見極めてまいります。

個人と法人の税率構造の違いに注意 / 法人成りで節税

個人と会社の税金は、その税率の構造が相違します。

個人の税金である所得税の税率は、所得が上がるにつれて段階的に上昇していきます。5% の最低税率から 40% の最高税率まで6段階に設定されています。(平成19年度以降の適用税率)

会社の税金である法人税の税率は、一律30% です。また、中小企業の場合は所得800万円までは 18% です。

なお、中小企業の800万円までの所得に適用される税率は、本来は 22% です。
しかし、平成21年4月1日から平成23年3月31日のあいだに終了する事業年度(つまり2年間)については、これを 18% まで引き下げる暫定的措置が現在とられています。
この、中小企業の税率軽減措置は、民主党政権による国会運営と、東日本大震災の影響による混乱により、時限的に延長措置がとられています。軽減税率の特例が無くなることは考えにくいですが、今後の国会決議を注意深く見守る必要があります。


個人と法人の税率構造については、別のカテゴリー「税率構造の違い」にて詳述します。ここでは、総論として次の3つのポイントだけ押さえて下さい。

所得が低い場合は、個人の税率が会社の税率より低い
→ 会社に利益を残さず、社長の給料を増やして給与所得控除を最大活用する

中小企業に認められる、所得800万円までの18%税率(低い税率)を活用する
→ 社長の所得が一定の水準を超えた時点で、社長と会社との間での所得配分を検討する

最高税率は個人のほうが高いため、個人の税率と会社の税率が逆転する所得レベルがある
→ 社長の昇給はストップして、会社に利益を残す


すなわち、
社長の所得(給与所得)が『一定の水準』を超えている場合は、『儲け』の一部を会社に残したほうが税金面では有利になるわけです。
この『一定の水準』というのは個々人で異なるため、一概には申し上げられません。(所得控除の金額が個々人により相違するためです。)


このように、『給与所得控除を最大限に活用して税金を最小化』がどんな場面でも当てはまるわけではないのです。社長の所得が一定水準を超えている場合、社長と会社の所得配分を最適化してやる必要があるわけです。

個人事業の法人成り(法人化)による節税を考える ○ 最後に

このように、個人事業を法人成り(法人化)し、会社と個人の利益(所得)配分を最適化すれば節税が可能になることは、概略で御理解いただけたと思います。

ただし、最初に述べておりますように、節税メリットだけでなく、そのデメリットも認識していただき、両者を天秤に掛けたうえで、法人成り(法人化)をご検討下さい。


ここまでは、法人成りによる節税の総論、いわば概略部分です。
次からは、給与所得控除および税率構造の差異につき、それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。

給与所得控除の詳細へ進む


法人成りに関するお問い合わせは、こちらからどうぞ。