社長の給料を増やせば、必ず節税になるわけではありません

会社に利益を残さず出来るだけ社長の給料を増やすことで、給与所得控除のメリットを最大限利用できます。
しかし、ここで注意しなくてはいけない点があります。

それは、社長の給料が、ある一定水準を超えたら、利益を全て給料にまわすのではなく、一部を会社に残したほうが、会社と社長のトータル税額を減らせる、という点です。

その原因は、個人と法人の税率構造の違いにあります。

個人と法人の税率構造の違いに注意 / 法人成りで節税

個人の税率は、所得の増加につれて高税率となる構造になっています。

一方、法人のそれは、所得水準にかかわらず、一定です。ただし、中小企業については、年800万円までの所得には低い税率が適用されます。


これは重要な点ですので覚えておいて下さい。

個人と法人それぞれの所得と税率の関係を示したチャートを作ってみました。横軸が所得金額、縦軸が各所得レベルに対応する税率です。


所得の増加にともない、個人の税率は、なだらかな曲線を描いて上昇していきますが、法人のそれは、所得が800万円を超えた時点で急激に上がり、あとは一定です。

所得3,000万円を超えたあたりで個人と法人の税率が逆転していますね。
「そうか!個人の所得が3,000万円を超えたら、それ以上給料は増額せず、会社に利益を残せばいいわけだな。」 と、思われたのではないでしょうか?

しかし、ちょっと待って下さい。

所得が800万円までは、法人の税率は非常に低く、約 25% から 27% です。この部分を考慮する必要があります。個人の場合、所得1,000万円あたりで税率が 27% に達します。つまり、それを超える所得は会社に利益として残し、会社で税金を払ったほうが有利なわけです。

ただし、会社の利益が800万円を超えた時点で税率は 40% を超え、個人の税率を上回るため、その超過分は、再度、個人の給料にまわす必要があります。そして、個人の所得が3,000万円を超えた段階で昇給はストップです。

では、1,000万円の所得は、給料に換算すればどの程度の金額になるのでしょうか?

残念ながら、所得控除の金額が各人違いますので、一概には言えません。また、厳密に計算したところで、その通りに配分できるわけでもありません。

「給料2,000万円」、このあたりを1つの節目と考えられてはいかがでしょうか。

それでは、個人と法人の税率構造を少し詳しく見ていきましょう。

個人の税率構造 / 法人成りで節税

給与所得者たる社長が負担する税金は、所得税と住民税です。

うち、所得税の税率構造は、一般に累進税率といわれ、所得水準の上昇にともなって税率も上昇する、という構造をもっています。所得税の税率は、最低税率5%、最高税率40%の6段階の税率構造をとっています。(平成19年度分以降)

一方、住民税の税率は一律10%です。(平成19年度分以降)

そのため、所得税と住民税の合計税率は、次のようになります。

個人の税率構造(所得税 + 住民税)

  所得金額
    → 税率(所得税 + 住民税 *1


  195万円以下
    → 15%

  195万円超 330万円以下
    → 20%

  330万円超 695万円以下
    → 30%

  695万円超 900万円以下
    → 33%

  900万円超 1,800万円以下
    → 43%

  1,800万円超
    → 50%


    *1 :住民税の税率は、一律10%です。


例えば、所得金額1,000万円の人に適用される税率は、一律で43%ではありません。1,000万円の所得のうち、195万円以下の部分、330万円以下の部分、・・・と、それぞれの所得階層に分解し、それぞれに応じた税率が適用されます。

なお、ここでいう『所得』について、注意しなくてはなりません。
『所得』とは『課税所得』のことです。

たとえば、給与所得者の場合、
給与収入 − 給与所得控除額 = 給与所得
給与所得 − 所得控除額 = 課税所得
  なのです。

『所得控除額』とは、社会保険料や扶養控除などの所得から差し引かれる金額の総額をいいます。

法人の税率構造 / 法人成りで節税 

会社が負担する税金は、法人税、住民税および事業税です。

まず、法人税の税率は、利益(所得)に対して一律30%の固定税率です。ただし、資本金が1億円以下の法人に係る、800万円以下の利益(所得)については、18% の低い税率が適用されます。

たとえば、資本金1千万円の法人の利益が2,000万円であった場合、800万円については18% の税率が、残りの1,200万円については 30% の税率が適用されます。

なお、中小企業の800万円までの所得に適用される税率は、本来は 22% です。
しかし、平成21年4月1日から平成23年3月31日のあいだに終了する事業年度(つまり2年間)については、これを 18% まで引き下げる暫定的措置が現在とられています。


この法人税の税率に、住民税および事業税の税率を加味した実効税率(簡便的に一本化した税率)は、会社の利益に応じて次のようになります。

  会社の利益
    → 合計税率(法人税、住民税及び事業税)
: 大阪の場合です

  400万円以下
    → 24.8%

  400万円超800万円以下
    → 26.4%

  800万円超2,000万円以下
    → 40.9%


  2,000万円超
    → 41.7%



(注)なお、会社は消費税を負担しますが、消費税は、個人と法人の利益配分の最適化には影響を与えないため、ここでは検討対象にはしていません。


ここまで、給与所得控除、個人と法人の税率構造の違いについて、少し詳しく見てきました。
今度は具体的な試算を例示したいと思います。そうすることにより、より具体的にご理解いただけると思います。