節税効果の例示 / 法人成りで節税

では具体的に節税の効果を見てみましょう。
私が、お伝えしたいポイントは2つです。

高所得の個人事業主ほど節税効果が大きい

節税効果は、事業所得の水準に比例します。
事業所得が大きいほど節税効果も大きくなります。

会社と社長の所得配分の最適化に配慮する必要がある

いかにして会社と社長のトータル税額を少なくするか、がポイントです。
社長の給料が、ある一定水準を超えた時点で、会社と社長の所得配分の最適化を検討する必要が生じます。


では、例示により節税効果を具体的に試算してみます。

高所得の個人事業主ほど節税効果が大きい / 法人成りで節税

事業所得の金額が、次のような個人事業主を想定してみます。
金額は、全て万円単位です。

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ここでいう「事業所得の金額」は、青色申告等特別控除の適用前の所得と考えて下さい。


個人事業での税額

・事業所得以外の所得は無いものと仮定しています。
・税額の計算は青色申告特別控除(65万円控除)を織り込んでいます。
・所得控除(所得から差し引かれる金額)は一律200万円と仮定しています。
・他の前提条件等は、こちらをご確認下さい。

上の3つのケースの税額は、それぞれ次のようになります。

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なお、税額は、所得税、住民税および個人事業税の合計税額です。


個人事業を法人成り(法人化)した場合

・給与所得控除のメリットを最大限に利用すべく、会社に利益を残さず、儲けを全て社長に給料として支給するものとします。


会社の税金

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会社の利益はゼロゆえ、法人税を支払う必要はありません。しかし、法人の場合、最低7万円の住民税を負担する必要があります。


社長の税金

一方、給料を支給された社長の税額ですが、

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*1:青色申告特別控除の適用前の事業所得です。この金額を給料とすれば、会社に利益は残りません。

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税額は、所得税および住民税の合計税額です。


会社と社長の合計税額

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個人事業の法人成り(法人化)による節税額

以上の試算結果をまとめれば、次のようになります。

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試算結果からお解りのように、所得が高いほど節税効果も大きくなります。

反対に、事業所得が500万円のケースでは、メリットは殆どありません。

このように、事業所得の水準が高くない段階では、節税メリットは小さく、逆に、追加コスト(社会保険料など)を考えれば、コストアップになることは避けられません。

したがって、法人成りの可否については、取引上の信用度のアップ、求人での有利性など、節税以外のメリットがあるか否かを中心に検討すべきです。


ここでは給与所得控除を利用した節税額の試算をご覧いただきました。つぎは、会社と社長の所得配分の重要性について検討してみます。

会社と社長の所得配分の重要性 ○ 試算その1 / 法人成りで節税

ここからは、会社と社長の所得配分が、トータル税額に与える影響を試算してみます。

最初に、次のようなケースを想定してみます。
金額は、全て万円単位です。

          ケース 1      ケース 2
         ----------    ----------
会社の利益        0       1,000
社長の給料    2,000       1,000


ケース 1 は、会社に利益を残さず、全て社長に給料として支給したケース。
ケース 2 は、会社と社長とで利益を折半したケース。

会社と社長の税金の合計額は、どちらが少なくなるでしょうか?
社長の所得は給与所得のみと仮定し、所得控除(所得から差し引かれる金額)は一律200万円と仮定します。その他の前提条件は、こちらをご覧下さい。

          ケース 1      ケース 2      差  額
         ----------    ----------    ----------
会社の税金        7(*1)      294         
社長の税金      504         131
         ----------    ----------
税金の合計      511        425         86
         ==========    ==========    ==========


(*1) 法人の場合、利益がゼロでも最低7万円の住民税を納付する必要があります。

利益を配分した方が、僅かではありますが、トータルの税金は少なくなりました。

なぜでしょうか?
答えを申し上げる前に、もう一つの試算を見て下さい。

会社と社長の所得配分の重要性 ○ 試算その2 / 法人成りで節税

別の例示を見てみましょう。
金額は、同じく万円単位です。

          ケース 3      ケース 4      ケース 5
         ----------    ----------    ----------
会社の利益        0       1,000      2,000
社長の給料    3,000       2,000      1,000


全てのケースとも、社長に給料を考慮に入れない段階での会社の利益は、3,000万円です。これを、ケース 3 から ケース 5 につれて、会社に残す利益を大きくしています。
それぞれのケースでの税額を見てみましょう。


         ケース 3      ケース 4      ケース 5
        ----------    ----------    ----------
会社の税金       7         294         703
社長の税金     960        504        131
        ----------    ----------    ----------
税金の合計     967        798        834
        ==========    ==========    ==========


おかしな結果が出ましたね。
どうして ケース 4 は、他のケースより、トータル税額が際だって少ないのでしょうか?

その原因は、個人と法人の税率構造の差にあります。



法人の税率構造は、利益が800万円までは低税率が適用され、それを超える利益に対しては高い税率が適用になります。つまり、『ケース 4』では、この法人の低税率部分を上手く利用しているわけです。

このように、社長の所得水準によっては、会社と社長の所得配分が、出来る限り最適になるよう配慮する必要があります。また、事業所得の水準が高い個人事業者が法人化するにあたっても、同じことが言えるわけです。

これで試算に基づく例示はお終いです。
少しは、法人成りによる節税のイメージを、具体化していただく手助けになりましたら幸いです。


ここまでは、法人成りによる所得税や法人税の変化、について検討してきました。個人事業者には、もうひとつ大きな税金がありますよね?

そうです!消費税です。