法人成りした年の申告はどうなるか / 具体例を

このカテゴリーでは、法人成りした年の個人と法人の税務申告はどうなるのか? を取り上げます。
そこで、まずは具体的な例示をもとに検討します。


具体的な例示

仮に、今年の5月14日に会社設立の登記申請をして、めでたく受理されたとします。(この日付に、特に意味はありません。)
会社設立の日は、設立登記の申請日ですから、今年の5月14日になります。

ただ、前のカテゴリーに書いたように、会社設立の日には、実際に会社が出来上がっているわけではなく、法人名義で銀行口座を開くことも出来ません。


   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
      
     
     設立登記の完了日は、この約1週間後になります。
   
   


また、5月14日という日は、少々中途半端すぎますね。

「できれば、6月1日から会社としての事業をスタートさせたい。」
事業主様が、そう考えたとしましょう。

それゆえ、取引先に法人設立のご挨拶状を出す際に、その中で、営業開始日を6月1日とアナウンスします。

また実際に、6月1日から会社で事業を行います。
具体的には、請求書や領収書などの発行名義の変更などが該当するでしょう。


この場合、

会社設立の日は、5月14日です。 (設立登記の申請日)
でも、会社が事業を開始したのは、6月1日になります。
裏返せば、個人が事業を廃止したのは、5月31日です。 (6月1日の前日)


   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
      
     
     設立登記の完了日は、この約1週間後になります。
   
   
   6月1日 法人が事業を開始した日
   
   


結論として、

5月31日終了時点で、事業が個人から法人へ引き継がれます。

以下、これを前提として、個人と法人の税務申告について説明します。

法人成りした年の税務申告はどうなるか? / 個人の申告

まずは、個人の税務申告から説明します。

個人の申告は

今年の5月31日をもって個人事業を廃止するわけですから、その日までは、個人事業が継続されています。

つまり、今年の1月1日から5月31日までの期間について、事業所得の申告が必要になります。(消費税も同様です。)
下の図の、赤いライン部分が、個人の申告対象期間になります。


   1月1日 年初の日
   
   
   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
     
   
   
   5月31日 個人事業を廃止した日
    6月1日 法人が事業を開始した日
   
   


特に申告書の様式が変わることはありません。
事業所得の計算期間が短くなるだけです。

また、事業の廃止後、事業所得が無くなります。
そして、会社から受け取る役員報酬が、給与所得として申告書に加わります。


注意が必要なのは、次の2点です。


青色申告特別控除は期間按分しません。

個人の事業期間が5ヶ月であることから、特別控除も5ヶ月分、つまり控除額の12分の5しか控除できない、と考えておられるケースが多いようです。
これは間違い。年の中途で法人成りした場合も、全額控除できます。


法人の設立費用は、経費には出来ません。

これは、あくまでも法人が負担すべきものですので、個人の経費にするのではなく、法人の経費として計上します。


あと、個人事業の廃業届の提出をお忘れなく。

法人成りした年の税務申告はどうなるか? / 法人の申告

次に法人の税務申告について説明します。

法人(会社)の申告は?

最初の事業年度は会社設立日からスタートする、という点で注意が必要です。

上の例示を、もう一度、確認してみましょう。

会社設立の日:5月14日(設立登記の申請日)
事業の開始日:6月1日(法人としての実際の事業開始日)

会社の登記簿上、5月14日付けをもって、新しい会社が生まれたことになります。したがって、その日から法人としての事業年度が開始されます。いつから事業を開始したのか?は、別の問題なのです。

法人の申告対象期間を図で見てみましょう。
青いライン部分が、法人の申告対象期間になります。


   
   
   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
   
   
   6月1日 法人が事業を開始した日
   
   
   
   
   法人の事業年度の末日


繰り返しますが、「実際に事業を開始した日」は、「最初の事業年度の開始日」と必ずしもイコールではありません。

「最初の事業年度の開始日」は、形式的に判断されます。
つまり、登記簿謄本に記載されている「会社設立の日」が、自動的に最初の事業年度の開始日になります。

事業年度の開始日(=会社設立の日)から、実際に事業を開始した日までの間は、会社として事業はスタートしていないけれど、開業の準備をしている期間ということになります。

ヤヤコシイですね。

法人成りした年の税務申告 / 個人と法人の比較

ついでに、もっとヤヤコシイお話をしてみます。

個人の申告対象期間を、もう一度、確認してみましょう。
赤いライン部分が、個人の対象期間でしたね。


   1月1日 年初の日
   
   
   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
   
   
   5月31日 個人事業を廃止した日
    6月1日 法人が事業を開始した日
   
   


これに、法人の対象期間を青いライン部分で重ねてみます。


   1月1日 年初の日
   
   
   
   5月14日 会社設立の日(設立登記の申請日)
   
   
   
    5月31日 個人事業を廃止した日
     | 6月1日 法人が事業を開始した日
     |
     |
     ↓
     = 法人の事業年度の末日


5月14日から5月31日までの期間については、個人・法人の両方が申告対象期間としています。

オカシイのではないか?

いえ、おかしくは、ありません。
この期間については、

・個人:5月31日まで、個人事業を継続している。
・法人:5月14日から31日までは、開業準備をしている。

というわけです。


個人の章でも書きましたが、会社の設立費用はもちろん、開業準備のための支出は、すべて会社の負担となります。
個人が立て替えて支払った金額は、後日、会社に精算してもらうことになります。




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