個人事業から法人へ引き継ぐ資産や負債 / 法人成りによる引継ぎ

個人事業を営んでいれば、色々な事業用の資産や負債があるはずです。
法人成りした後、事業上の必要性から、法人へ引き継ぐ(移す)べき資産や負債もあるでしょう。

まずは、事業用の資産や負債には、どのような種類のものがあるのか、確認してみます。


事業用の資産

資産としては、どんなものがあるでしょうか?

まず思いつくのが、備品類でしょう。
パソコンなどのOA機器、机やキャビネットといった什器の類。応接セットもお持ちかもしれません。
いま仕事場にいらっしゃるのなら、一度、あたりをグルッと見回してみて下さい。内装の工事代なども該当するケースがあるでしょう。

業種によっては、かなりの在庫を持たれているかもしれません。

また、売掛金や未収金。これらは、営業債権という立派な資産です。


事業用の負債

一方、負債は、どんなものが該当するでしょうか?

代表的なのは、金融機関や親戚・知人などからの借入金。もちろん、事業のための借入金に限ります。

また、仕入代金の未払分である買掛金。
経費の未払分(未払金)なども負債です。

リース契約なども負債の一つです。


これらが、事業用の資産・負債として、個人事業主のもとに存在します。
法人成りに際しては、それら資産・負債のうち事業上の必要性があるものを、法人に引き継ぐ(移す)必要がでてきます。

それらをどうやって移すか? / 法人成りによる引継ぎ

法人で事業に使用する必要がある資産や負債を移すのですが、その、移し方としては、3つの方法があります。


現物出資

まずは、必要な資産や負債を法人に出資する方法。

出資は金銭での出資が原則ですが、一定の条件のもと、現物、すなわち、経済的な価値のある有形・無形の財産を出資することが認められています。

現物出資については詳しくお知りになりたい方は、こちらでご確認下さい。

では、負債を出資できるのか? はい、出来ます。
ただし、資産とセットで出資して、資産価値のほうが大きい場合でなければ認められません。


売買

法人の設立後、個人事業主から法人に売却します。
資産と負債をセットで売却することも出来ます。

個人事業主と法人との間で売買契約書を必ず作成し、そのなかで代金決済の期限も明記しておくべきです。
代金をいつまでも決済せずに残しておけば、個人が法人から借入をうけていると、税務署から見なされる恐れがあります。

また、売買する場合は、現物出資と異なり、負債の金額のほうが資産のそれより大きくても問題ありません。
差額を、個人事業主が会社に支払えば済みます。


賃貸借

もう一つ、移し方があります。

それは、会社に賃貸する、貸し付ける、方法です。
もちろん、貸し付けるわけですから、資産に限られます。

例えば、不動産等は法人に移さず(現物出資や売却せず)、個人所有のままにしておき、法人に貸し付けるケースが多いです。

資産や負債を移した場合の課税関係 / 法人成りによる引継ぎ

個人から法人へ資産や負債を移すには、3つの方法があることを説明しました。
では、それぞれの方法に関して、その課税関係を見ていきましょう。


売買した場合

例えば、個人事業で使用していた備品類などを想定してみましょう。

会社に売却して利益が出れば、個人事業主に所得税が課税されます。
利益が出なければ所得税は課税されませんが、消費税は、そうはいきません。
利益の有無に係わらず、売却価額の5%相当の消費税が課税されます。
(個人事業主が免税事業者である場合は、もちろん消費税は課税されません。)


現物出資した場合

税法では、現物出資も売却と同様に取り扱われます。
税金面では、売買も現物出資も同じ、と覚えておいて下さい。

消費税については、例えば会社員が起業した場合と、個人事業を法人成りした場合で、決定的に異なります。
会社員が法人設立にあたり現物出資を利用しても、消費税とは無縁です。
ところが、個人事業主が現物出資すれば、消費税の課税対象となってしまいます。


このように、資産を個人から法人へ移せば、個人事業主に課税関係が生じます。


売買と現物出資 どちらがよい?

税金面での取扱いが同じであることから、私個人としては、売買をお勧めします。
売買契約書を作るだけですから、現物出資より簡単であり、コストも少なくて済みます。
また、最低資本金の規制がなくなった現在、現物出資を積極的に利用すべき意味も薄まりつつあります。


賃貸借の場合

資産を法人に移す(売却する)わけではないので、課税関係は生じません。

ただし、個人が受け取る賃貸料は、所得税と消費税の課税対象になります。

法人へ移すことによる税金面でのメリットは? / 法人成りによる引継ぎ

法人へ移すことで、個人事業主が、所得税と消費税を課税される可能性は説明しました。
これはいわば、移すことのデメリットです。

では、税金面でのメリットは、あるのでしょうか?


税金面でのメリット

個人事業で使用されている機器備品や車両といった資産は、確定申告時において、減価償却費を経費にされているはずです。減価償却の対象になる資産を、償却性資産といいます。

法人成りすれば、事業自体は法人に移り、個人事業は廃業するわけですから、減価償却費は経費になりません。
そこで、償却性資産を個人から法人に移せば、法人で減価償却費を経費にできます。
減価償却費を法人で計上するには、償却性資産の所有者を法人にする必要があるのです。

事業用の資産を法人へ移すことの税金面でのメリットは、この1点だけです。


法人へ移す価額は?

所得税申告書の添付書類に、青色申告決算書というのがあります。
この3ページ目の、「○ 減価償却費の計算」という項目を御覧下さい。
減価償却の対象になっている資産が、個別に記載されているはずです。
この表の右端に、「未償却残高(期末残高)」という項目があります。

これが、各々の資産の未償却残高です。

法人へ移す際には、この未償却残高で売却します。
そうすれば、売却益が個人に生じることは無く、所得税は課税されません。

消費税は、どうにもならないのか? / 法人成りによる引継ぎ

なぜ、個人事業者の場合、事業用の資産を売却すれば、消費税の課税対象になるのでしょう。


なぜ、個人事業者だけが課税されるのか?

それは、個人事業者が、消費税の課税事業者であるからです。

会社員が起業する際に、パソコンなどの備品類を現物出資したり、売却しても、消費税が課税されないのは、会社員が、消費税の課税事業者ではないからです。

消費税の課税事業者に該当するか否か、色々な要件があります。
そのうち、最も重要なのが、事業を営んでいる、という要件です。


消費税の課税を何とか避けられないか?

誰しも思いは同じです。
 でも、如何ともしがたいのが現実です。

 

個人事業を廃業した後に売却すれば良いのでは?
という人もいます。
でも、税務署は、そんなに甘くはありません。
課税逃れと認定されるのが、おちです。



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