保証金を現物出資できないか? / 法人成りでの引継ぎ

事務所等を賃借する際に支払う(預託する)保証金。
この保証金を現物出資できないか? というお問い合わせが少なからずあります。


一般的な保証金

関西と関東では様子が違うようです。
私が、関東の事情については疎いため、関西のケースを前提に話を進めます。

商業ビルの保証金は、地域や物件によって異なりますが、月額賃料の10ヶ月から12ヶ月程度が一般的ではないでしょうか。

退去時の返金率は、入居期間に応じて高くなり、入居時から20年経過後は、全額返金という例が多いようです。
すなわち、入居して20年が経過しないと、返金率が確定しないわけです。

面白いことにこの逆のケースもあるようです。

一方、入居時点で返金率が確定しているケースは、一般的にはSOHO向けのレンタルオフィスに多いようです。(金額も少額です。)


現物出資できるか?

残念ながら出来ません。

何故でしょうか?

それは、事務所等の賃貸借契約に係る保証金は、オーナーに資金を預けていますが、オーナーに対する債権ではないからです。

債権になるのは、実際に退去し、返金してもらうべき金額が確定した段階で、その金額が債権(未収入金)となるのです。

退去時までは、保証金は債権とは言えず、現物出資の対象とはなりません。


返金額が確定している場合は?

先の「一般的な保証金」で書いた、関西に多く見られる保証金の契約形態。
入居期間に応じて返金率が高くなり、入居時から一定期間経過後は、全額返金になるというのを思い出して下さい。

入居後の経過期間に応じた返金率が、以下のようなケースを想定します。

   5年未満 : 10%
   5年以上 : 30%
  10年以上 : 50%
  15年以上 : 70%
  20年以上 : 全額返金

例えば、現在、入居7年目であれば、保証金のうち30%は返金が確定していることになります。また、20年以上であれば、全額の返金が確定していることになります。

これでも駄目なのか?

残念ながら、これも駄目なんです。

あくまでも、オーナーに保証金の返金を請求できるのは、退去した後です。
また、退去後の原状回復工事代をどちらが負担するか(通常は賃借人)の問題もあり、原状回復工事が終了(もしくは見積が終了)した後でないと、返金額は確定しません。


現物出資は、あきらめましょう

退去していることが、オーナーに対して保証金の返金を請求できる要件です。
この状態で、賃借人はオーナーに対して返還請求権を有することになります。

返還請求権は債権であるため、現物出資が可能です。

でも、それなら実際の返金を待って、金銭出資した方が設立手続は簡単です。
現物出資はあきらめたほうが得策です。

保証金を法人に移すには / 法人成りでの引継ぎ

現物出資は無理にしても、保証金を個人から法人へ移すには? をテーマにします。

法人へ移すには?

オーナーさんが、賃借人名義の変更に応じてくれるか否か?で異なります。
ここでいう名義の変更は、もちろん、個人から法人名義への変更です。

一旦契約を解除して、再契約というケースと違い、契約書の名義のみを切り替えてくれるか否か、です。


応じてくれる場合

保証金は法人のものになります。
言い換えれば、将来、退去した際に、法人が保証金の返還を受けることになります。

しかし、保証金を実際に支出したのは個人です。
したがって、保証金相当額を法人から返してもらうことになります。

法人は、保証金を資産計上すると同時に、個人事業主に対して未払金(債務)を計上することになります。
返金方法は、一括でも分割でも問題ありません。

賃料は法人が負担し、経費として処理します。
退去時に保証金から差し引かれた敷き引き等は、法人の経費になります。


応じてくれない場合

このケースでは、契約名義どころか、表札パネルやメールボックスの名称変更すら応じてもらえない可能性があります。

その場合は、転居するしかないでしょうから、契約名義のみ変更できない場合を前提とします。

たとえ契約名義が個人であっても、法人が実際に使用しており、家賃や共益費等を法人が負担していれば、それは法人の経費になります。

しかし、保証金は、法人には移らず、個人に残ったままです。
将来、退去する際に、保証金は個人に返還されることになります。

問題は、このままでは、退去時に保証金から差し引かれる敷き引き等が、法人の経費にならず、個人の負担になってしまうことです。
法人成り後、個人は事業者ではなくなっているため、敷き引き分や原状回復代を経費にすることが出来ません。

そこで、個人は、オーナーと交わしている賃貸借契約と全く同じ条件で、法人との間で賃貸借契約を結びます。
オーナーから借りた物件を、同じ条件で法人へ転貸(又貸し)するわけです。

法人へ保証金を移した後、資金決済する点は、前出の ・応じてくれる場合、と同様です。


ただし、この転貸契約は、オーナーに対しては無効です。
判明すれば、強制退去の要件に該当する可能性もあります。
詳しくは、契約書をご確認下さい。



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