法人の決算と申告を自力で出来るか? / 法人成りの経理と申告

よく、次のようなご質問を頂戴します。
法人の税務申告を、自分ですることは可能か?
ある意味で、お答えしようのないご質問ゆえ、いつも困ってしまいます。

自分で申告書を作成することは、可能といえば、可能です。
ただ、そのために必要な時間をとれるか? また、その覚悟があるか?

個人と法人の税務申告は、全く別物とお考え下さい。
全く新しいことをマスターする必要があることを、まずは、理解していただく必要があります。


おおまかに、次のような流れを経て、申告書の作成に至ることになります。
この流れは、基本的には、法人でも青色申告の個人事業でも同じです。

会計帳簿の作成

   

事業年度末の決算作業

   

税務申告書の作成


この流れに沿って、順番にご説明していきます。

帳簿は何とか作れるか / 法人成りの経理と申告

青色申告されている個人事業者であれば、会計帳簿は何とか作成できると思います。

ただ、お勉強は必要だと思います。
個人事業の場合と全く同じ、と言うわけではないのです。


法人特有のポイント

個人事業ではお目にかかれなかった、法人特有の事項があります。
代表的なものを挙げてみます。

資本金という概念

個人事業でいう「 元入金 」と同じようなものでしょ? とお考えの人もいらっしゃいます。
しかし、全く違う概念なのです。
資本金は、元入金のように年度年度で増減することはありません。

法人と社長(個人事業主)との資金のやり取り

個人事業の場合、事業資金と事業主の私的なお金を区分する必要はありません。お金は全部、個人事業主の所有資金です。
したがって、事業資金を個人の財布に入れた場合は、すべて事業主貸しで処理します。反対に、個人のお金を事業資金に充てた場合は、すべて事業主借りで処理すれば足ります。

法人になると話は違ってきます。
法人と社長個人(事業主)とは、全く別人格の存在になるためです。資金のやり取りの性質によって、処理の方法が異なってくるのです。

法人の資金を個人に渡した場合
法人から個人へと資金が動いた場合です。
その出金内容によって、法人では、個人に対する貸付金、仮払金、預け金、立替金、などの適切な処理をする必要があります。とくに、貸付金とそれ以外の区分については重要です。

個人から法人へ資金を渡した場合
逆に、個人から法人へ資金が動いた場合です。
この場合も、法人では、個人への貸付金の回収、個人からの借入金、仮受金、預り金、などの適切な処理が求められます。とくに、個人への貸付金の回収、個人からの借入金、およびそれ以外の区分については重要になります。

交際費の取扱い

個人事業の場合、接待交際費に関して、これといった注意は必要ありません。
理由は、その交際費に業務関連性さえあれば、すべて経費になるからです。 個人事業の交際費は青天井、といわれる所以です。

法人の場合は、そうはいきません。
詳しくは後述しますが、経費に出来る一定の枠があるのです。そのため、飲食代1つとっても、交際費か否かの見極めが必要になってきます。
この見極めは、帳簿作成時にする必要があります。なぜなら、時間がたてば、内容を忘れてしまう恐れがあるからです。記憶が曖昧になる前に、処理する必要があるのです。

給料の支払い

個人事業主には、給料という概念はありません。
しかし、法人の場合は、従業員を全く雇用していない1人会社の場合でも、社長に対する給料がでてきます。
社会保険や税金の源泉、年末調整など、今までになかった煩わしさも加わります。

後述しますが、社長の給料の決め方も、注意が必要なります。


白色申告の場合

白色申告をされている個人事業者が、法人成りして、帳簿を自分で作成しよういる場合です。

この場合は、まず、青色申告に変えることをお勧めします。
そして、まずは、自力で個人事業の帳簿を作成してみて下さい。

いきなり法人の帳簿を自力で作成することは困難です。

決算になると少しアヤシクなる / 法人成りの経理と申告

じつは、法人の決算は、個人の決算と、それほど差はありません。

個人の決算と言っても、ピンと来ないかもしれませんね。
ところが、毎年、個人でも確定申告の時に決算書を作っているのです。

所得税申告書の添付書類に、青色申告決算書というのがあります。これが個人の決算書です。
1ページ目が、法人でいうところの損益計算書。そして、最後の4ページ目が貸借対照表と製造原価報告書(製造業のみ作成します。)に該当します。


決算書を自力で作れるか?

個人と法人の決算に、それほど差はない、と書きました。
それは、決算書の様式(体裁)にそれほどの差はない、と言い換えても良いと思います。
法人の決算書の様式は、意外に自由です。会社によって色々な様式で作成されておられます。

また、決算処理についても、個人と法人とでは、特筆すべき違いはありません。
ただし、業種や業態によっては、一概には言えない部分もあります。


重要なのは、決算は会計帳簿の出来映えによって左右される点です。

会計帳簿が、いい加減、もしくは質的に問題がある場合、決算も・・・それなりの結果になります。
決算書は、会計帳簿を元に作成されるため、当然の結果です。

日常の取引や入出金が、キッチリと会計帳簿に反映されておれば、正確な決算をすることが出来るわけです。

税務申告は自力で出来るか? / 法人成りの経理と申告

これを自力でするには、かなりの事前準備と覚悟がいります。
事前準備とは、簡単に言ってしまえば税金の勉強をする、ということです。
その時間をとれるか、が最大のポイントになるはずです。

個人の場合と何が違うのか?

問題は、法人税と住民税(府県民税と市町村民税)の申告書、特に、法人税の申告書です。

これは、法人税法の専門的な知識がないと無理です。
書店で、何か1冊、適当な本を手に取られて、パラパラと眺めてみて下さい。如何に困難か、納得いただけると思います。

何とか自力で、という方のために、3つのキーワードを書いておきます。

確定決算主義とは?
税務調整(別表調整ともいいます。)は何故必要か?
税務調整は、どんな場合に必要になるか?

この3つを、まず理解することが、自力申告の近道です。
書籍を見てもこの点が分からないという場合、自力で・・・というのは、諦めた方が無難です。

最後に、消費税は、個人も法人も同じ取扱いがなされます。
したがって、法人成りしても、申告が複雑になることはありません。個人事業の場合と、同じです。


法人の申告には行政のサポートとがない

税務申告に際しての、行政サポートの有無。この点が、個人の場合との最大の違いです。

個人の申告では、毎年、確定申告時期になると、「確定申告無料相談会」なるものが全国各地で開催されます。我々税理士も、お手伝いに駆り出されます。

極端な話、帳簿さえ持っていけば、申告書の下書きをしてもらえます。(どこの会場でも、事業所得の申告を扱っているわけではありません。ご確認のうえ、ご参加下さい。) 1回で終わらない場合もあるでしょうが、無料で申告書が作成できます。

法人の場合、「無料相談会」に相当する行政サポートは、殆どありません。

たまに、市役所などで開催される税務相談会(無料)では、法人も受け付けている場合もあるそうですが、開催頻度は高くないでしょう。また、必要なとき(決算時期)に開催される保証もありません。

税務署の窓口で書き方を教えてもらう、しかないのが、実情です。

現実的な判断としては / 法人成りの経理と申告

帳簿は自力で作成する。そして、帳簿の記載内容のチョックと、決算・申告を専門家に依頼する。
これが、現実的な判断ではないでしょうか?

将来、税理士にでもなろう、というのならともかく、本業に何の関連もない税法の「お勉強」に時間を費やすのは、どう考えても馬鹿げています。





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