個人のお金と会社のお金 ○ 法人成りとお金の区分

法人成りしたら、個人のお金と会社のお金を、キッチリ分けなければならない。
こう、お考えの個人事業者は多いようです。

個人事業のときも、ご商売のお金を個人のそれと、ある程度、区分しておられた人もいらっしゃると思います。

ここでは、お金の区分について、考えてみます。
少し趣向を変えて、肩のこらない、読み物風にしてみました。
なお、この物語(?)は、実話に基づいています。

2つの財布 ○ 生真面目なのは良いことですが

私の知人のお話。ここでは、Aさんとしておきます。

Aさんは、Web関連のコンサル会社を起ち上げて間もない若手経営者です。
彼は非常にお洒落で、いってみれば今風。そのためか、チャラチャラした人間、という印象を持つ人もいるようです。しかし、根は非常に生真面目で几帳面な人間なのです。

そんな彼と、久しぶりに食事に出かけた夜のこと。


2つの財布

私の方が年上ということもあり、ご馳走する予定だったのが、どうしても今晩は自分が払う、とのこと。 結局、割り勘で落ち着きました。

お店への支払は私が済ませていたので、後は、彼から半分もらって一件落着。

・・・のはずが、

彼は、上着のポケットから財布を取り出すも、どうやら足りない様子。
私としては、最初からご馳走する予定だったので、「今日は、イイよ。」と、言おうとすると、
何と、彼のセカンドバッグから、財布がもう1つ出てきました。


店を出て、

「どうして財布を2つ持ってるの?」

「あ、これですか。こっちは、会社の財布なんですよ。」

と、ちょっと照れくさそう。

自分と会社のお金をハッキリ分けるために、財布を別にしているそうです。
彼の生真面目さ、几帳面さゆえ、でしょう。

しかし、Aさんには申し訳ないのですが、私は少々呆れてしまいました。


財布を分けることに意味があるか?

Aさんは、2つの財布を使いこなしているようです。
先日の食事の時のように、個人の持ち金で足りず、一時的に会社の財布から借用した場合、その記録をメモしているようです。

Aさんに聞いてみました。

「メモし忘れることもあるんじゃない?」

「う〜ん、ありますね。細かい金額になると忘れることも多いかな。領収書がない場合は、もう、お手上げですね。」

「で、結局、訳が分からなくなったりとか?」

「それは、当たってるかも・・・」

「第一、面倒くさくない?」

「確かに面倒ですよ。でも、お金のことだから、出来るだけキッチリしておきたいんですよ。」


ご立派! この生真面目さには脱帽します。(私も見習わねば!)

しかし、彼の方法は絶対に上手く機能しません。保証します。


そもそも分けようと思った理由は

私は、小規模な会社(たとえば、社長の1人会社など)の場合、個人の現金と会社のそれを区別する必要はないと思っています。

Aさんの言葉を思い出して下さい。
「お金のことだから、出来るだけキッチリしておきたい」
という部分。

彼は、出来るだけ何をキッチリしたかったのか?

それは、会社の現金を「いつ」「何に」「いくら」使ったのか、そして、現在、「いくら残っているのか?」のはずです。

(彼が、それをハッキリ自覚していたか否かはわかりませんが。)


Aさんのように、財布を別にしている人は、他にもいらっしゃるでしょう。

でも、何度も言いますが、絶対に上手くいきません。
事実、長続きしない例が多いのではないでしょうか?

理由は、私とAさんの会話にもありますが、次の3つです。
1.まずもって、非常に面倒くさい。(少なくとも、私には無理です。)
2.お金(現金)には、所有者の名前が書かれていない。
3.領収書や支払メモがなければ、使ったこと自体を忘れる可能性が高い。

結果的に、訳が分からなくなり、もろくも頓挫します。


では、どうすべきか?

いきなり結論です。

会社は現金を持たない ことにすれば問題は簡単に解決します。

会社のお金は、会社名義の銀行口座のお金のみ。

社長さんは、毎月初、会社の銀行口座から一定の金額を引き出して、ご自分のお財布に入れておきましょう。個人の財布に入った時点で、このお金は社長さんのお金です。財布を分ける必要はありません。

ただし、会社の帳簿(出納簿)には、「何月何日に社長に仮払金***円」という記録を残しておきます。


普段は

お金の出所は、全て社長さんの財布です。

毎日、社長さんの財布からは、諸々の支払がなされていくはずです。
交通費、飲食代、本や事務用品、OA用品などを購入したりと。

これらの支払には、個人的な出費と会社の経費が混在しているはずです。
でも、気にする必要はありません。

ただし、会社の経費であれば、出来るだけ領収書をもらうようにしましょう。
無理なものは、小さなメモに支払内容を走り書きしておきましょう。

必要な情報は、「支払日」「支払先」「内容」と「金額」です。
たとえ領収書があっても、不足している情報があれば、領収書の余白にでも
メモっておきます。


そして、月末

社長さんの手元には、領収書や支払メモが残っているはずです。

これらは、会社の経費として支払われた現金を意味します。
日付順に、コピー用紙にでも貼り付けていって下さい。

それを見ながら、「仮払金の精算書」を作成します。
(手書きでもパソコンでもかまいません。)
必要事項は、「支払日」「支払先」「内容」と「金額」、これだけ。

精算書の合計額が、社長さんの財布から支払われた、会社の経費合計です。
なお、領収書等を貼り付けたコピー用紙は、精算書に添付しておきます。

そして、精算書を基にして、帳簿作成ソフトに順次入力していきます。
精算書を作るのが面倒な場合には、領収書等から直接、帳簿作成ソフトに入力してもかまいません。この場合、領収書の類は別途ファイルして下さい。


足りなかったり、余っていたら?

会社から仮払いで受け取った金額と、精算書の合計額を比較してみましょう。

両方同額なんてことは、まずありません。
使った金額の方が多かった、つまり、足りなかった、もしくは、受け取った金額が余っている場合が通常でしょう。

この場合、差額をどうすべきか?

毎月末、不足分は会社から受け取り、余った分は返す、が基本でしょう。
でも、これも面倒ですね。

足りなかった、または余った金額が大きくならなければ、決算まで放っておいてもかまいません。決算の時には、精算するようにしましょう。


Aさんのご意見

このことを、後日、Aさんに話しました。

この方法なら、手間と、ある意味でのストレスは、従来の半分以下になるはずです。

ところが、

「やっぱり、何かスッキリしないから、今まで通り続けます。」
とのこと。


私の力不足か、彼の頑固さか?
こちらも、スッキリしない(?)気分です。

あとがき ○ 法人成りとお金の区分

このお話は、平成19年3月19日に、当サイトより発行したメルマガを加筆修正したものです。

なお、Aさんは、現在も、財布を2つ持ち歩いておられるようです。


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